「無縁社会」の、ああ無情。
2017/12/24
当社が運営する貸家に住んでいた、一人暮らしのおばあちゃんが亡くなった。(享年80才)
「生あるものは、いつかは滅するもの」この当たり前の出来事なのだが、痛烈な無情感を私は体験しました。
この物件は、当社が7年前に競売で取得した物件でした。既にこのおばあちゃんが賃借人として入居しており、継続して賃借させて欲しいと嘆願され、そのまま賃貸借契約を継続していました。このおばあちゃんは、なかなか波乱万丈な生涯で、1回目の結婚で娘を二人授かっておりましたが、離婚の末に娘たちを置き去りにして他の男性(2回目の結婚)との生活を選びました。
しかし、良くある話ですが、この男性が遊び人であり、相当なお金の苦労をしたとの事です。その後、年老いて働けなくなり、結果的に唯一の肉親である娘たちを頼るしか他なく、娘たちはこの男性との離婚を条件に金銭的援助を行ったそうです。(娘たちは高学歴であり、それぞれの夫も高収入で幸せな家庭を築いているとの事です)
ところが、このおばあちゃんは、形式上は離婚したものの、この男性との関係を断ち切る事ができず、娘夫婦達から住居用に提供された区分マンション(1000万円程度)を売却し、この男性に貢いでしまったとの事です。この件に激怒した娘夫婦達は、おばあちゃんと絶縁状態となり、おばあちゃんは生活保護を受けながら現在に至る事となりました。
こんな男性には甘いおばあちゃんですが、人付き合いが大変良く、近所の高齢者の友人達との交友が親密で、亡くなった時も友人達を自宅に招き宿泊させていたとの事です。亡くなる前夜も普通に過ごし、朝になっても起きてこないので、宿泊した友人が起こしに行くと、ベットの中で息絶えていたとの事です。(心臓の衰弱による自然停止との事)
救急車を呼びましたが、既に死亡との事で搬送せず、その後警察による検視が行われ、司法解剖後に市役所が用意した安置所に置かれたそうです。市の担当者が娘達やおばあちゃんの実家に連絡したそうですが、当然ながら娘たちは関りを拒絶し、おばあちゃんの実家も代替わりが進んでおり、おばあちゃんの存在すら知らないとの事です。(親戚付き合いもしていなかった)
当社には、おばあちゃんが亡くなった夕方に、友人の方から悲報が届きましたが、市の福祉課に連絡しても「個人情報」との事で、死亡の事実すら答えられないとの事でした。
運よく、第一発見者である友人の方には、警察からちょくちょく捜査の問合せ連絡が来るので、その際に、ご遺体の安置場所等を聞き出し、なんとか火葬場所と日時を探る事ができました。
成り行き上、私も火葬に参列してきましたが、誰一人家族も親戚も無く、市の担当者すら参列しておりませんでした。(市から委託を受けた葬儀屋さんが1名のみ)私とご近所の友人方の10名程度で収骨しましたが、遺影も位牌も無い寂しいものでした。その後、遺骨はどうなるのか?と葬儀屋さんへ尋ねると、市が無縁仏を預かってくれる寺院や団体等を探しますが、一定期間内に探せなかった場合は、産業廃棄物処理されるとの事です。(ゴミと一緒に埋められるとの事です)
家族に囲まれて、末代まで供養される幸せな生涯を終える老人もいれば、告別式もできずにゴミと一緒に産廃処分される老人もいるのだと痛感致しました。
娘さん達の憎悪や憤怒の度合いは、私には知る由も有りませんが、例えどんな母親であれ、実の母親の最後も見ず、遺骨受け取りどことか全ての関与も拒絶して、本当に将来後悔しないのか心配です。
私は職務上、賃貸借契約の解約や残留物撤去のために、相続人たる娘さん達と今後会わなければなりません。相続人放棄されるかも知れませんが、その場合でもその意思を確認しなければ、この件は一歩も前には進みません。このような事例があるので、高齢者への賃貸借契約を嫌がる大家さんが多いのですが、高齢者社会においては避けられない実態です。
全ての一人暮らしの老人を収容可能な施設が有るわけでもなく、国もこれ以上の社会保障費増大を防ぎたい思惑があり、高齢者受難時代が今後発生するのは間違いないでしょう。
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