岸田首相が、来月行われる自民党総裁選挙へ出馬しないとの会見を行った。

旧統一教会問題や、政治と金の問題の責任を取るとの事だが、党内での求心力低下で追い込まれる前に「先手」を打った形だ。

本音では岸田政権のまま総選挙に持ち込みたかった野党からは、恨み節も聞こえてきた。

岸田内閣の支持率は一向に好転せず、岸田首相の下では次の総選挙は戦えないとして、菅前首相の時の様に現職総理を変えようとする動きも、自民党内では水面下で行われていたようだ。

私は個人的には岸田首相を有能な政治家だと思っている。誰もやりたがらない、でもやらなければいけない決断を果敢に実行した総理大臣であった。

軍事力の強化や防衛費の増額、新NISAの恒久化や賃上げの推進、原発処理水の海洋放出等、普通の政治家なら先送りにする諸問題を、批判を受けながらも実行してきた。

戦後最悪と言われる日韓関係を改善し、日米関係は史上最も強固な状況となり国賓として訪米も果たしている。日本では評価が低いが世界ではとても評価されているリーダーであった。

岸田首相の不運は、旧統一教会と自民党政治家との親密関係問題と、自民党の政治と金問題であった。政権与党である自民党総裁が首相になるのが日本の政治システムなので、自民党の悪行は自民党トップの責任となるのである。

岸田首相の退陣表明以降、連日「ポスト岸田」候補が報道されているが、国民の人気と自民党内での人気は一致していない。

次の首相を選ぶのは自民党の総裁選挙である。新総裁が首相になると、国民に信を問うために程なく総選挙が行われるだろう。自民党のほとんどの国会議員は、自分が落選するかもしれない次の総選挙に勝てるリーダーを選びたい。優先順位は、有能な政治家より国民的人気のある政治家なのかもしれない。

岸田首相を嫌いな理由を聞くと、高齢者は「子育て政策を重視し、高齢者をないがしろにしている」と言い。若者は「自分たちは年金が少ないかも知れないのに、高額な社会保険料の増税負担が不満」と言っている。政治とは表裏一体であり、メリットとデメリットのバランスである。次の首相はバランス感覚に優れた政治家になってもらいたい。「政治家の真価は後世の人々が決める」という言葉は、とても的を得ていると思う。